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ラブレターは蝋引きの書字板で~古代ローマのオウィディウス

明日はバレンタインデーですね。
今日は、ラブレターの話題です。

古代ローマでは、「蝋引きの書字板」がラブレターの役割を果たしていたんです。
(2015年2月13日)



古代ローマの詩人 オウィディウス( 紀元前43年- 紀元17年)の詩を読むと、
手帳型の蝋引きの書字板が、
ラブレターのやりとりに使われていたことがわかります。

『ローマ恋愛詩人集 中山 恒夫訳』(国文社)より引用です。

図版は、『ラテン語図解辞典 古代ローマの文化と風俗/水谷 智洋 』(研究社)からです。


蝋引きの書字板とは、板に蝋を塗ったもので、鉄筆で文字を書きます。


オウィディウス『恋の歌』では、
蝋引きの書字板を「手帳」と呼んでいます。

オウィディウスは、ここに恋人(コリンナ)を誘う手紙を書いて、
そのラブレターを「髪結いの下女」(ナペー)に届けさせます。

「髪結いの下女」とは、このようなひとでしょうか。
IMG_1758.jpg


オウィディウスは、恋人に「自分と会って欲しい」と書いたのでしょう。
恋人からの返事をもらってくるように、ナペーをせかせています。

しばしば ぼくの所に来るのをためらうコリンナを せき立ててくれ、
しばしば困っているぼくに 誠意を実証してくれた女よ、
刻み記した手帳を受け収って、朝早く女主人に
届けて、邪魔になる遅れを 精出して追い払え

他のことはお愛想の手で 記した蝋が説明する。
話していると、時間が逃げる。彼女が十分暇な折に 手帳を渡せ。
『恋の歌/オウィディウス』


「刻み記した」や「蝋」という言葉があるように、これが蝋引きの書字板であることがわかります。

これが書字板です。
IMG_1755.jpg
こすれて字が消えないように、板の上下左右の縁は高くなっていたそうです。


オウィディウスは、コリンナが同じ手帳に返事を書いてくれるのを待っています。

どうして鉄筆を持ち続けて、指を疲れさせる必要があろう。
手帳一ぱいに 「お出で」と書かれてあれば良い。『恋の歌/オウィディウス』


「鉄筆」という言葉がでてきますが、蝋引きの書字板に文字を書くには「鉄筆」を使います。

鉄筆(尖筆)というのは、こういうのです。
IMG_1756.jpg
上の図は閉じたところ、下の図は筆先をのばしたところ。
長さ20センチほど。凶器になるほど鋭かったそうです。

これも鉄筆(尖筆)です。
IMG_0383.jpg
こちらのタイプは、片方がへら状になっており、書いた字を消すのに使います。


オウィディウスの詩『悲しい返事』では、コリンナが同じ手帳に書いた「返事」がわかります。

ぼくの災いを泣け。悲しい手帳が帰って来た。
不幸な文字は 今日は駄目と言う。『悲しい返事/オウィディウス』


残念ながら、オウィディウスはふられたのでした。

ふられたオウィディウスは、書字板にあたっています。

四つ辻に投げ棄てられて 横たわるがいい、役に立たない木材め、
通りすがりの車の重みで 砕かれるがいい。『悲しい返事/オウィディウス』



この文言から、この手帳には木の枠がついていていることがわかります。


こんな訳で、ぼくはお前が名前の通り、事実において、二枚舌であることが分った。

3枚重ね、5枚重ねの書字板もあったようですが、
オウィディウスの手帳はどうやら2枚重ねの書字板のようですね。

詩の最後はこうやって結ばれます。

怒ったぼくは何を祈ろう。朽ちた老年がお前を腐らせ、
不潔なかびで 蠟が白くなるようにと呪うばかりだ。『悲しい返事/オウィディウス』


オウィディウスは最後までこの書字板に当たり散らしました。

このラブレターはうまくいかなかったわけですが、
蝋引きの書字板が 恋人たちの間を往復する・・・・・・
メールでのやりとりと違って、
ちょっと素敵じゃないですか?

参考記事)
2014-01-01 『ラテン語図解辞典 /水谷 智洋 』~古代ローマの文房具って、今のと似てる!





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