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『踊り子ミツ/コレット』~青色の少尉との文通

1月28日はコレットの誕生日です。

シドニー=ガブリエル・コレット ( 1873年1月28日 - 1954年8月3日) は、
フランスの女性作家。
『青い麦』、『シェリ』などが有名です。

今日は『コレット著作集 5』(二見書房)から
『踊り子ミツ』の紹介です。

「青い軍服を着た少尉」を愛してしまった踊り子ミツの、
切ないおはなしです。


第一次世界大戦中の話です。

ミツはミュージックホールの踊り子で、
金持ちの「旦那」がついていています。

あるとき楽屋で、「青い軍服を着た少尉」と知り合いました。
彼にプレゼントの礼状を書いたことがきっかけで、
二人の文通がはじまります。

婦人帽子の女工から踊り子になった無学なミツですが、
その手紙は、彼を楽しませます。

青色の少尉からミツへ
気取りのない文章を書くミツ、小学生のような字のミツ、しかし、あなたは自分の言いたいことを決して手紙に書き落としてはいない。



ミツは、それまで手紙など書いたことがなかったのです。

ミツから青色の少尉へ
あなたにはご想像もおつきにならないでしょうが、あたしは今までにどなたとも文通などしたことはありません。あたしはパリ生まれで、どこにも移ったことがありません。だから、知り合いの人たちも、みんなパリの人たちです。
手紙を書き始めたというようなことは、あたしの生涯の事件だということを、よく理解していただきたいのです。



素朴なミツの手紙ですが、とても心のこもったものでした。

ミツから青色の少尉へ
あたしは例によってあなたに不幸なことが何一つ起こらないようにと、心からのお祈りを送るだけにします。この言葉はあたしが幼かったころ、元旦に挨拶の装飾文字として書かれたものを借用したに過ぎません。あなたのために、もっと美しい言葉を考え出せないことを大変残念に思います。でも、そんなことはどうでもいいことです。あたしのお祈りの方が美しい言葉より上だからです。なぜって言葉は実在しませんけど、あたしのお祈りは実在しますものね。



二人はお互いに、「とても会いたい」と思うようになります。

青色の少尉からミツへ
親愛なミツ、ぼくはお会いしたい、ぜひお目にかかりたい。ほかに何をいうことがあるでしょう?お会いしたくてしょうがないのです。



ミツは、青色の少尉を愛している、と感じます。

ミツから青色の少尉へ
あんな間抜けな手紙を書くかわりに、「お目にかかる必要があります。あたしはすっかり変わりました。あなたを愛しているような気がしてなりません・・・・・」と簡単に書くつもりでいたあの日以来、どんなにあたしが気持ちを抑えてきたかを、あなたはご想像になれるでしょうか。



青色の少尉は、2日間だけパリに来ることになり、
二人は念願かなって会うことができました。

ミツは「今はほんとうに恋をしている」と悟ります。

ただ、愛情を差し上げるっていうのよ。話はちっとも入りくんじゃいないわ。だって、あたし、今まではほんとに恋をしたことがなかったんですもの。だけど、今はほんとに恋をしているわ。


ところが、青色の少尉(ロベール)は、実物のミツに違和感を感じています。

実際、ロベールはシャンパンを飲み、好きなご馳走を食べたのに、がっかりしはじめている。

なぜだろう?あんなに打ちとけた手紙は書けたのに・・・・彼は、今自分がミツの恋人になりたいと、そう確信していないことに気づく。


二人は一晩を一緒に過ごしました。
ミツは青色の少尉との新生活を夢見ています。

彼がその気でいてくれるなら、今持っている品物なんか何もいらない、日貸しの部屋で結構だわ・・・・・・今あたしは月に700フラン稼いでいる、今度のレヴィユーで800フランになる・・・・・・切子ダイアの指輪だって売っていい・・・・・・


ところが、翌日、
青色の少尉とまた会えると思っていたミツのもとに、
彼から「すでにパリを離れた」という手紙が届きます。

ぼくはいつ戻って来られるのか、そのことは知りません。また、ほんとに戻ってこられるのかも分かりません。



ミツの最後の手紙です。
恨むでもなく、淡々としています。
ミツから青色の少尉へ
なぜあたしに詫びたりなさるの?あたしには、あたしに詫びたりなさるのは、お発ちになるのではなくて、あたしと別れるためみたいに思われますわ。

愛するお方、あなたにとって難しいことは、あたしから愛されないということです。そして、あたしにとって殆ど不可能なことは、あなたに愛されることです。
たとえあなたが、さよならミツ、とご返事くださっても、あたしは死んだりはいたしません。


マルセル・プルーストは『踊り子ミツ』を読んで泣いたといいます。

マルセル・プルーストはコレットを敬愛していた、彼が病床についてからも二人の間には親交続けられていて、彼女がこの『踊り子ミツ』を送った時、彼は次のような手紙を彼女に書き送ったとう。「マダム、ぼくは今夜久しぶりに泣きました。ぼくはずっと苦痛と退屈に苦しみ続けていますが、今夜泣いたのは、そのためではないのです。ミツの手紙を読んでいたのです。最後の二つの手紙はたしかに傑作です・・・・・・」解説 新庄嘉章


ミツの恋は成就しませんでしたが、
ミツは、たくましくなったのではないでしょうか。

ともかく、あたしはかたくなに、あなたが残していくことのできる悲しみよりも いいものを期待しています。



参考記事)

2013-01-28 『ジジ/コレット』~今も昔も高級娼婦のマナーはたいへん

2012-01-28  本の中の文房具~文房具好きのクローディーヌ/コレット


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