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『クリスマスの思い出/トルーマン・カポーティ』~31個のフルーツケーキ

今日は『クリスマスの思い出/トルーマン・カポーティ』の紹介です。

昨日のエントリー『あるクリスマス/トルーマン・カポーティ』とはちがい、
ここで描かれるのは全く純真無垢なクリスマス。
愛と思いやりで一杯のクリスマスです。

登場人物は、おなじみのバディー(7歳の男の子)と
親友のスック(バディーのいとこで60歳を超えた女性)です。

両親が離婚したために、親戚に預けられているバディー。
居候のような身の上のスック。
二人はとても貧乏です。
でも、なんて楽しそうなんでしょう!

○フルーツケーキの季節が来たよ!

バディーとスック。
仲良しの二人は、11月になるとクリスマスケーキを焼く準備を始めます。

11月のある朝がやってくる。すると僕の親友は高らかにこう告げる。「フルーツケーキの季節が来たよ!私たちの荷車を持ってきておくれよ。私の帽子も探しておくれ」と。まるで自分のその一言によって、胸おどり想いふくらむクリスマス・タイムの幕が公式に切って落とされたかのように。

ケーキに入れる材料の買出しに行かなければなりません。
二人は貧乏ですが、この日のためにクリスマス貯金をしてきたのです。

材料のうちで一番高額なのはウイスキー。
州法で販売が禁止されているので、二人はこっそり買いに行きます。
買いに行くのは「物騒だと噂されているハハさん」の店です。
二人はびくびくしながら、ハハさんを訪ねました。

「ねえハハさん、もしよかったら、おたくの上等のウイスキーを1クオートいただきたいんですが」
彼の目はさらにつりあがる。なんたることか、ハハが笑っているのだ!声まで出して笑っている。
「おたくら、いったいどっちが酒飲みなんだね?」
「フルーツケーキを焼くんですよ、ハハさん。料理に使うんです」

見た目怖そうなハハさんは、思いのほか親切でした。
二人から代金を受け取らず、こういいます。

「なあ、お前さんがた」ともちかけるように言う。そしてその金を僕らのビーズの財布の中にばらばら戻す。
「金はいらんから、かわりにフルーツケーキをひとつ届けてくれや」

ハハさんに贈るケーキには、特別にたくさんレーズンを入れることになりました。


さあ、いよいよケーキ作りが始まります。


石炭と薪をくべられた黒い料理用ストーブは、灯をともしたカボチャのように赤々と光っている。泡立て器がぐるぐる回転し、スプーンがバターと砂糖を入れたボウルをかきまわし、バニラが甘い香りを漂わせ、ジンジャーはそれをひきしめる。とろけるような、鼻がちくちくする匂いが台所に充満し、家の中に広がり、煙突からたちのぶる煙にのって、外なる世界へと漂い出ていく。4日後に僕らの仕事は終わる。31個のフルーツケーキ。ウイスキーをふりかけられ、窓枠や棚の上にずらりと並べられている。

ケーキは全部で31個。
誰にあげるのでしょう?
親しい人でしょうか?
必ずしもそうではないのです。

ケーキはいったい誰のために焼かれたのだろう?
友人たちのためだ。でも近隣に住む友人たちのためだけではない。たった一度しか会ったことのない、あるいはただの一度も会ったことのない人に送られるものの方がむしろ多いだろう。


スックはひどく人見知りをする性格なのですが、
あまり親しくない人の方が、気楽に振舞えるのでした。

ホワイト・ハウスのしるしの入った礼状や、時折カリフォルニアやボルネオから届く手紙や、包丁研ぎのくれた1セントの葉書なんかを保存しているスクラップ・ブックを見ていると、僕らは空のほかには何も見えないこの台所のずっと彼方にある、活気に満ちた外の世界に結びつけられたような気持ちになれるのだ。

ほとんど外へは出ない二人です。
フルーツケーキが結ぶほんのわずかな繋がりが、広い世界への橋渡しでした。



○ツリーを探しに森へ


ケーキを全部送り終わると、今度はツリーの飾りつけです。
二人はクリスマスツリーを探しに、森の中へ出かけます。

「私は知っているんだよ、バディー、どこに行けば美しいモミノキがみつかるかをね。ヒイラギもだよ。お前の目玉くらい大きな実がついているやつ。森のずっと奥の方にあるんだ。私たちがこれまで入ったこともないくらい奥の方だよ。

二人はとてもりっぱなモミノキを見つけました。
なんと、それを手斧で切り倒し、家まで持ち帰るのです。

さあ、飾りつけです。

僕の親友はツリーを「バプティスト教会の窓みたいに」輝かせたいのだ。雪で枝がしなうみたいに目いっぱい飾りつけたいのだ。でも雑貨屋に行って日本製のきらびやかな飾りを買うようなお金は、僕らにはない。そこで僕らはいつもの手を使うことになる。はさみとクレヨンと色紙をたっぷりと持って、何日も台所のテーブルに向かう。僕がスケッチを描き、親友がそれを切りぬく。猫がいっぱい、それに魚(描くのが簡単だからだ)、林檎に西瓜、捨てずに貯めておいたハーシーのチョコレート・バーの銀紙から作り出された何人かの羽のはえた天使たち。

身近なものを工夫して、クリスマス・ツリーは完成しました。
スックに言わせると、「食べちゃいたいほど綺麗」にできたのです。



○それぞれのプレゼント

プレゼントはどうしよう。
二人はこっそり考えます。

バディーは、スックにチョコレートをかぶせたチェリーを買ってあげたいと思います。
スックがとてもそれをが好きだからです。

スックは、バディーに自転車を買ってあげたいと思います。
バディーがとても自転車を欲しがっているからです。

でも全然お金のない二人です。
どうしたでしょう?

「でも私はつらいんだよ、バディー。お前に自転車を買ってやれないことでね。私はパパがくれたカメオを売ろうともしたんだよ」-彼女は口ごもる。何だか身の置きどころがないみたいにー「今年もまた凧を作ったんだよ」。それから僕も打ち明ける。僕も彼女のために凧を作ったのだと。そして二人で大笑いする。

結局二人とも、プレゼントに凧を作っていたのでした。

彼女は言う、もらった中でいちばん嬉しかったのは僕が作った凧だと。なにしろすごく綺麗なのだもの。でも彼女が僕のために作ってくれた凧はそれよりもっと綺麗だ。その凧はブルーで、ところどころに金と緑の善行章の星が散らしてある。それだけじゃない。そこには僕の名前がちゃんと書き込んであるのだ、「BUDDY」と。
「ねえ、バディー、風が吹いてるよ」


二人にはそれで十分なのです。
だって、二人とも凧あげの名人だから。

クリスマスの朝、二人は凧をあげに行きました。


この物語の最後には、悲しい結末が書かれています。

でも今日は、そこは読まないでおきましょう。


さあ、スックがよんでいます。

「ねえ、バディー、風が吹いてるよ」



参考記事)
『あるクリスマス/トルーマン・カポーティ』~揺れるイノセントな世界

『感謝祭の客/カポーティ』~間違いをふたつ重ねても正しいことにはならない




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